「紙の月」 角田光代
仮定は過去へ過去へと遡りながら無数に散らばっていくが、けれど、どの仮定を進んでも、自分が今この場にこうしているような気がしてならない。
お金をたくさん、たくさん遣って目の前にある物を人を掴もうとするのだけど、
どうしても手に入らない。
しまいには、それでなくても良かったんじゃないか、もしかして幾ら費やしてもそれは手に入らないのかと思い始める。
そもそも、それが欲しかったのは本当の私?
と、どんどん深みにハマる話。
角田さんの小説はどんな描写も穏やかな空気が漂っている。
でも、その日常感が怖い。
そこにいて、そう感じたのが、自分のような気がしてしまうから。